高齢者福祉 「高齢者と共に暮らす」No.23
「高齢者と共に暮らす」コラムNo.23 「相続放棄」が認められるには
リーガルワークス合同事務所
正しい”手続き”が必要です
次郎さんは個人商店を営む福山家の二男です。
母親の達子さんは次郎さんが学生のころに亡くなっています。家族想いの兄の一郎さんは高校を卒業してから父太郎の経営する商店を手伝って暮らしております。
近年、商店の近くに大型スーパーが進出したこともあってか太郎さんの商店の売り上げがおもわしくなくなり、これを打開するためにお店を改装することになりました。資金は太郎さんの持っている定期預金を解約したものと、太郎さんが長年懇意にしている取引先の小田切社長から借金して工面した300万円を当てました。
突然の他界、残された知人からの借金
そんな日々の心労がたたり、ある日突然倒れた太郎さんがあっけなくこの世の人ではなくなってしまいました。結局、太郎さんが残したのは商店兼自宅である家の賃借権と小田切社長に対する借金300万円および信用金庫の普通預金が12万円であることが判明しました。
父の最後の望みが商店の再建であることを知っていた二人は、太郎さんの遺産のすべてを一郎さんが受け継ぎ守ってゆくことに決めて次郎さんが相続を放棄する旨の覚書を作りました。
兄との間で相続を放棄すると約束したが
それから1年。ある日、小田切社長が次郎さんのもとを訪ねてこう言いました。
「お父さんの残した借金300万を返してくれないかな。」
次郎さんは兄との約束で相続を放棄したのだから自分には父の残した借金を支払うべき義務はないのではないかと思っています。
相続放棄がちゃんと認められるのであれば次郎さんは借金の支払いはしなくてよさそう気がしますが、果たしてどうなのでしょう?
一定のルールに従った書類での意思表示
相続が開始した場合(通常は親族の誰かがお亡くなりになった場合)、相続人は自分のために相続が開始したことを知った時から3カ月以内に承認もしくは相続放棄をする場合には、その意思を表示しなければなりません。だから、次郎さんは太郎さんが亡くなったことを知った時から3カ月以内に相続の意思表示をしなければなりませんでした。
今回のケースでは兄弟でお話をして次郎さんが遺産を放棄すると決めたのだからそれでよしといえるとも思えます。
ところが、「相続放棄」とは、決められた一定のルールに従って行為をしないと求める効力は得られないという性質のものを言います。
民法は、「相続放棄」をする場合には「家庭裁判所への申述」が必要だとしています。
つまり、家庭裁判所へ申述書を必要書類とともに提出しないと「相続放棄」の効果は認められませんよと言っています。
今回、残念なことにこの手続きをしていませんでした。
相続にはマイナスの財産(借金)も含む
相続はプラスの財産のみではなくマイナスの財産(借金)においても起こります。
次郎さんは、小田切社長の返済の請求について全額を拒否することはできないのです。
「洛西タイムズ316号」2010年6月1日発行 コラムNo.23掲載記事
